
愛媛県松山市のイオンスタイル松山3階にある買取専門店 くらや 松山店では、ヘレンドをはじめ、マイセンやロイヤルコペンハーゲン、リチャードジノリ、大倉陶園などのブランド洋食器のほか、骨董品や美術品、掛軸、茶道具など幅広いジャンルの店頭買取・出張買取を行っております。
近年は、ご実家の片付けや遺品整理、生前整理をきっかけに、美術品や骨董品だけでなく、食器棚にしまったままのブランド食器の買取相談も増えています。
今回ご紹介するのは、大洲市にお住まいのお客様からいただいた出張買取のエピソードです。
お客様から最初にいただいたお問い合わせは、お母様が集められていた絵画についてでした。
「母が百貨店などで購入した絵が何点か残っているのですが、見に来てもらえませんか。」
後日、ご都合に合わせてご自宅へお伺いし、まずは応接間や廊下に飾られていた絵画を一点ずつ拝見し査定を進めていきました。
査定を進める中で、応接間のサイドボードにたくさんの洋食器が並べられていることに気付きました。
カップ&ソーサーやティーポット、プレートなどがきれいに飾られており、ご家族が大切にされてきたことが伝わってきます。
お客様へ、
「こちらの洋食器も、お母様が集められていたものですか。」
とお尋ねすると、
「はい。母が集めていたものです。でも今日は絵だけお願いしようと思っていたので、そのままにしています。」
とのことでした。
そこで、
「ブランドによっては洋食器も評価できるものがありますので、よろしければ確認してみましょうか。」
とお伝えしたところ、
「そうなんですか。食器は売れるとは思っていませんでした。ぜひお願いします。」
とのご返事をいただき、洋食器も確認をさせていただきました。
サイドボードには、ノリタケやナルミ、ロイヤルコペンハーゲンなど、さまざまなブランド洋食器が並べられていました。ひとつずつ確認していくと、その中に鮮やかなグリーンの絵付けが印象的なヘレンドのカップ&ソーサーがありました。
葉や花の模様が職人の手仕事によって丁寧に描かれ、縁には金彩が施された上品な作品です。欠けやヒビは見受けられず、金彩の擦れも少なく、大切に保管されていたことがうかがえました。
さらに、同じシリーズのティーポットやプレートなども揃っていたので、ティーセットとして評価させていただきました。
査定内容をご説明すると、
「絵画だけではなく、食器まで見てもらえるとは思っていませんでした。母が大切にしていたものなので、きちんと評価していただけて安心しました。」
と喜んでいただき、ご成約となりました。
ブランド洋食器は、普段使いされていたものや長年飾られていたものでも、ブランドやシリーズ、保存状態によっては評価できる場合があります。
次章では、約200年の歴史を持つハンガリーの名窯「ヘレンド」の歩みについてご紹介いたします。
ヘレンドは、ハンガリー西部にある小さな村「ヘレンド」で生まれた磁器ブランドです。現在では世界を代表する高級磁器メーカーとして知られていますが、その歴史は1826年に陶器工房が開かれたことから始まります。
創業当初は日用品を中心とした小規模な工房でしたが、1839年に実業家のモール・フィッシャー(Mór Fischer)が経営を引き継いだことで、大きな転機を迎えます。
フィッシャーは、当時ヨーロッパで高く評価されていた磁器の修復や研究を重ねながら技術力を高め、高品質な磁器の製作に力を注ぎました。成形から絵付けまで細部にこだわった作品づくりを続けたことで、ヘレンドの名は少しずつヨーロッパ各地へ広まっていきます。
その名を世界へ知らしめるきっかけとなったのが、1851年にイギリス・ロンドンで開催された第1回ロンドン万国博覧会でした。
この博覧会に出品された作品は高い評価を受け、イギリスのヴィクトリア女王の目にも留まります。女王は、蝶や花が描かれた華やかなディナーサービスを気に入り、自ら注文したと伝えられています。この出来事はヘレンドの名声を大きく高め、後にその作品は「ヴィクトリア」というシリーズ名で親しまれるようになりました。
万国博覧会での成功をきっかけに、ヘレンドはヨーロッパ各国の王侯貴族から注文を受けるようになります。オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世やエリザベート皇妃をはじめ、多くの王室や名家に愛用されるようになり、ハンガリーを代表する磁器ブランドとして確かな地位を築いていきました。
その後もヘレンドは数々の国際博覧会へ作品を出品し、高い評価を受け続けます。伝統的なヨーロッパの様式だけでなく、日本や中国をはじめとした東洋文化から影響を受けたデザインも積極的に取り入れ、ヘレンドならではの多彩なシリーズを生み出してきました。
現在でもヘレンドでは、多くの工程を職人による手作業で行っています。成形や絵付け、金彩に至るまで、一つひとつ丁寧に仕上げられるため、同じシリーズであっても筆遣いや色合いにはわずかな違いが生まれます。こうした手仕事ならではの魅力は、約200年の歴史を経た現在でも受け継がれており、世界中の多くの人々を魅了し続けています。
長い歴史の中で、ヘレンドは数多くの人気シリーズを生み出してきました。
次章では、現在でも多くの愛好家に親しまれているヘレンドの代表的なシリーズについてご紹介いたします。
ヘレンドには、花や鳥、蝶などを題材にした数多くのシリーズがあります。東洋の陶磁器から影響を受けたものや、ヨーロッパの王侯貴族との関わりから誕生したものなど、それぞれの絵柄に異なる背景があります。
ここでは、ヘレンドを代表するシリーズをご紹介いたします。
・インドの華
インドの華は、ヘレンドを代表する東洋趣味のシリーズです。白磁の上に牡丹を中心とした草花や葉が細かく描かれ、周囲には籠や柵を思わせる文様が組み合わされています。
「インド」という名称が付いていますが、デザインには中国磁器を思わせる要素が多く見られます。19世紀のヨーロッパでは、中国や日本など東洋の陶磁器が王侯貴族の間で人気を集めており、ヘレンドもその影響を受けながら、さまざまな東洋風の絵柄を制作しました。
インドの華は、器の中央だけでなく、縁や余白にも小さな花や葉が細かく描き込まれているのが特徴です。色数も多く、金彩を交えた華やかな仕上がりとなっています。ヘレンドの公式資料では、小さな花と緩やかに伸びる葉を、籠のように見える様式化された柵が囲む意匠として説明されています。
カップ&ソーサーやプレートのほか、ティーポット、花瓶、飾り皿など、さまざまな形の作品が作られています。職人による細かな絵付けを楽しめることから、ヘレンドを象徴するシリーズの一つとして知られています。
・アポニーグリーン
アポニーは、インドの華をもとに図柄を簡略化して作られたシリーズです。
アルベルト・アポニー伯爵の依頼をきっかけに誕生したとされています。完成したデザインは伯爵の名前から「アポニー」と呼ばれるようになり、その後、ヘレンドを代表するシリーズへと発展しました。
器の中央には牡丹をもとにした植物文様が描かれ、縁には葉に囲まれた小さな花のモチーフが配置されています。インドの華と共通する意匠を持ちながら、余白を広く取り、模様をすっきりとまとめているのが特徴です。
インドの華が、器全体にさまざまな草花や文様を描いた細密で華やかなシリーズであるのに対し、アポニーはその主要な文様を残しながら、装飾を抑えたデザインとなっています。
アポニーには、グリーンのほか、オレンジ、ブルー、ピンク、イエロー、パープルなど複数の色があります。その中でも、グリーンを基調に絵付けされたものが「アポニーグリーン」です。白磁の余白と落ち着いた緑色の組み合わせに、縁や取手の金彩が加えられています。現在も多彩な色や色の組み合わせで制作されています。
・ヴィクトリア
ヴィクトリアは、蝶や牡丹、草花などを色鮮やかに描いたシリーズです。中国風の文様をもとにしながら、さまざまな色を使って華やかに仕上げられています。
第2章でもご紹介したように、1851年のロンドン万国博覧会でヴィクトリア女王の目に留まり、ディナーセットの注文を受けたことで知られています。女王にちなんでヴィクトリアと呼ばれるようになり、ヘレンドの名をヨーロッパに広めるきっかけとなりました。
蝶や花の配置、色の組み合わせにはいくつもの種類があり、一つのセットの中でも少しずつ異なる絵柄を楽しめるのが特徴です。
・ロスチャイルドバード
ロスチャイルドバードは、木の枝に止まる二羽の鳥を中心に、昆虫や草花などを描いたシリーズです。
鳥の羽や表情まで細かく描き分けられており、自然の一場面を切り取ったような絵柄になっています。鳥の組み合わせには複数の種類があり、ヘレンドの公式資料では、色鮮やかな二羽の鳥を描いた12種類の図柄があると紹介されています。
名称は、ヘレンドの食器を愛用していたロスチャイルド家に由来します。ロスチャイルド家は1850年頃からこの文様の食器を購入していたことが記録として残っています。
二羽の鳥の間に描かれた首飾りには、庭でなくしたネックレスを鳥が見つけたという逸話も伝えられています。鳥や草花を題材にした洋食器がお好きな方から、特に知られているシリーズです。
・ウィーンのバラ
ウィーンのバラは、白磁の中央に一輪のバラを描いたシリーズです。淡いピンク色の花と緑色の葉を組み合わせ、器の縁にも緑色のラインが入れられています。
インドの華やヴィクトリアと比べると色数や文様は控えめで、余白を生かした落ち着いたデザインが特徴です。ヘレンドの創業期から続く歴史の古い絵柄の一つで、ビーダーマイヤー様式を思わせる意匠としても紹介されています。
カップ&ソーサーやティーポットだけでなく、プレートやボウルなどにも展開されており、同じシリーズで一式を揃えやすいことも特徴です。
このほかにも、ヘレンドにはさまざまな色や文様のシリーズがあります。似たように見える植物文様でも、花や葉の配置、縁取り、使用されている色などを確認すると、それぞれの違いが見えてきます。
今回のお客様は、最初は絵画のご相談だけの予定でした。しかし、お話を伺う中でブランド洋食器も拝見させていただき、ヘレンドをはじめとしたさまざまな作品をご成約いただきました。
ブランド洋食器は、「使っていたものだから」「長年飾ったままだから」と、そのままになっていることも少なくありません。サイドボードなどに飾られているものは「価値があるのかもしれない」と思われる一方で、食器棚にしまわれていたものや普段使いされていたものは、「価値はないだろう」と思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、ブランドやシリーズ、セット内容、保存状態によって評価できる食器は数多くあります。
買取専門店 くらや 松山店では、ヘレンドをはじめ、マイセンやロイヤルコペンハーゲン、リチャードジノリ、大倉陶園など、さまざまなブランド洋食器の店頭買取・出張買取を行っております。
大洲市をはじめ、愛媛県内でご実家の片付けや遺品整理、生前整理をご検討の際は、お気軽にご相談ください。