
もくじ
「実家を片付けているのですが、陶器やガラスの置物がたくさん飾ってあります。祖母が旅行先や百貨店で集めていたものらしいのですが、買取ができるものなのでしょうか。」
今回ご紹介するのは、伊予市にお住まいのお客様からいただいた、おばあ様の集めた置物の出張買取エピソードです。
近年、ご実家の片付けや遺品整理をきっかけに、サイドボードや飾り棚に飾られている置物の買取についてのお問い合わせが増えています。
買取専門店 くらや 松山店では、骨董品や美術品、陶磁器、掛軸、茶道具だけではなく、ガラス工芸品やクリスタル製品についても店頭買取・出張買取を行っております。
お客様のお話では、おばあ様は旅行がお好きで、国内だけでなく海外へよく行かれていたそうです。そのたびに記念として旅行先の工芸品や置物を購入されていたそうです。
「応接間の飾り棚には、祖母が気に入って買ってきたものがたくさん並んでいるんです。私たちにはどこで買ったものなのか分からないものも多くて……。」
後日、お客様のご都合に合わせて伊予市のご自宅へお伺いしました。
応接間には大きなガラス扉付きの飾り棚が置かれ、色鮮やかなガラスの置物や陶磁器、洋食器、海外のお土産などがきれいに並べられていました。いろいろな国へ旅行されていたことが伝わりました。
飾られている置物は、鳥や魚をモチーフにしたガラスの置物や、金彩をあしらった作品などがありました。その中に、馬をモチーフにしたムラーノガラスの置物に目が留まりました。
たてがみや尻尾には金彩が施され、ガラスならではの透明感と躍動感が印象的な作品です。作品にはラベルも残されており、おばあ様が大事にされてきたことがうかがえました。
さらに、お客様が押し入れから商品の入っていた箱を持ってきてくださり、箱や購入時のしおりや説明書が残されていることも確認できました。
「祖母は気に入ったものは箱も捨てずに取っておく人だったので、それが役に立つなら良かったです。」
保存状態も良好で付属品も残されていたため、作品の特徴をご説明しながら評価を進め、ご納得いただいたうえでご成約となりました。
次章では、今回の出張買取で拝見した、ムラーノガラスにスポットを当てて、ヴェネチアンガラスの歴史と、ムラーノ島がガラス工芸の中心地となった背景についてご紹介いたします。
今回拝見した作品は「ムラーノガラス」でした。その歴史をたどると、「ヴェネチアンガラス」の歴史へとつながっていきます。
ムラーノガラスとは、ヴェネチア本島の北東に位置するムラーノ島で制作されるガラス工芸です。現在では世界的なブランドとして広く知られていますが、そのルーツはヴェネチアで発展したガラス工芸にあります。
現在では「ヴェネチアンガラス」と「ムラーノガラス」が、ほぼ同じ意味で紹介されることもあります。しかし厳密には、ヴェネチアンガラスという大きな枠組みの中に、ムラーノ島で制作されたムラーノガラスが含まれています。
ヴェネチアにおけるガラス制作の歴史は古く、ガラス職人の存在を示す記録は982年までさかのぼります。ヴェネチアは地中海交易の拠点として栄え、東ローマ帝国や中東地域などからガラスの原料や製法が伝わったことで、独自のガラス工芸が発展していきました。
大きな転機となったのが、13世紀末です。
当時のヴェネチアでは、ガラスを溶かすために高温の窯を使用していました。木造建築が密集するヴェネチア本島では火災の危険が高かったことから、1291年、ヴェネチア共和国はガラス工房の窯をムラーノ島へ移すよう命じたと伝えられています。
工房を一つの島に集めた背景には、火災を防ぐ目的だけでなく、発達したガラスの製法や職人の技術がほかの地域へ流出するのを防ぐ意図もあったと考えられています。
こうしてムラーノ島には多くのガラス職人や工房が集まり、島全体がガラス制作の中心地として発展していきました。
職人たちは代々受け継がれてきた製法を守りながら、透明度の高いガラスや、さまざまな色を使った装飾技法を生み出していきます。15世紀から16世紀頃には、ムラーノ島のガラスはヨーロッパ各地で高く評価されるようになり、王侯貴族の食器や装飾品、鏡、シャンデリアなどにも用いられました。
特に、透明度の高い「クリスタッロ」と呼ばれるガラスの開発は、ヴェネチアンガラスの歴史を語るうえで欠かせません。それまでのガラスに見られた色味や濁りを抑え、水晶のような透明感を目指したもので、薄く繊細な器や装飾品を作る技術も発達しました。
そのほかにも、色ガラスを組み合わせて花や幾何学模様を表現する「ミルフィオリ」、乳白色の「ラッティモ」、ガラスの中に金箔を閉じ込める装飾など、現在のムラーノガラスにも受け継がれている多彩な技法が生み出されています。
ただし、ヴェネチアンガラスの歴史が常に順調だったわけではありません。
ガラス職人の移動によって技術がヨーロッパ各地へ伝わると、ムラーノ島以外でもヴェネチア風のガラスが作られるようになりました。さらに1797年にヴェネチア共和国が終焉を迎えると、政治や経済の変化により、ムラーノ島のガラス産業も一時衰退します。
その後、19世紀に入ると、古くから伝わる技法を見直す動きが起こり、ムラーノガラスは再び活気を取り戻していきました。1861年にはムラーノ島にガラス博物館が設立され、歴史的な作品や制作資料が収集されるようになります。現在も同館には、古代のガラスからムラーノ島で作られた作品まで幅広く所蔵されています。
19世紀後半から20世紀にかけては、伝統的な技法を守るだけでなく、芸術家やデザイナーを制作に迎える工房も増えていきました。
花瓶や食器、照明器具だけでなく、人物や動物をかたどった置物、抽象的なオブジェなども盛んに作られるようになります。伝統的な吹きガラスの技術と、時代に合わせた新しい造形や色彩が組み合わされ、ムラーノガラスは工芸品であると同時に、美術作品としても評価されるようになりました。
今回、伊予市のお客様のご実家で拝見したガラスの置物も、このようなヴェネチアの長いガラス工芸の流れを受け継ぐ作品でした。
次章では、ムラーノガラスに見られる代表的な技法や特徴について、もう少し詳しくご紹介いたします。
ムラーノガラスが世界中で高く評価されている理由の一つが、職人たちによって受け継がれてきた多彩な技法です。
基本となるのは、高温で溶かしたガラスを吹き竿で成形する「吹きガラス」の技法です。ガラスが柔らかいうちに息を吹き込み、道具を使いながら少しずつ形を整えていくため、一つひとつ表情の異なる作品が生まれます。同じ工房で制作された作品でも、手作業ならではの個性を感じられることが魅力です。
ムラーノガラスを代表する技法として知られているのが、「ミルフィオリ」です。
イタリア語で「千の花」を意味するミルフィオリは、色ガラスを幾重にも重ねて作ったガラス棒を輪切りにし、花のような模様を表現する技法です。その鮮やかな色彩と繊細な模様から、花瓶やペーパーウェイト、アクセサリーなど、さまざまな作品に用いられています。
また、「ラッティモ」と呼ばれる乳白色のガラスも、ムラーノガラスを代表する技法の一つです。磁器のような柔らかな風合いを表現できることから、透明なガラスとは異なる落ち着いた雰囲気を楽しむことができます。
さらに、ガラスの中に金箔や銀箔を閉じ込める装飾技法も古くから受け継がれています。光を受ける角度によって輝きが変化し、ガラスならではの透明感と華やかさを同時に楽しめることから、置物や花瓶などにも数多く取り入れられています。
制作される作品は非常に幅広く、花瓶やグラス、ボウル、シャンデリアだけでなく、鳥や魚、馬などの動物をモチーフにした置物や人物像、抽象的なオブジェまでさまざまです。
今回、伊予市のお客様のご実家で拝見した作品も、馬をモチーフにしたムラーノガラスの置物でした。黒と透明のガラスを組み合わせ、たてがみや尻尾には金彩が施されており、ガラスの透明感を生かしながら躍動感のある姿が表現されていました。
現在もムラーノ島には多くの工房があり、伝統的な技法を守りながら新しい作品づくりが続けられています。そのため、同じムラーノガラスでも工房や作家によってデザインや表現方法はさまざまで、それぞれに異なる魅力があります。
次章では、今回の出張買取を振り返りながら、ムラーノガラスをはじめとするガラス工芸品の買取についてご紹介いたします。
今回拝見したムラーノガラスの置物は、保存状態が良好だったことに加え、作品に貼られていたラベルや、箱・しおりなどの付属品も残されており、お客様も驚きの評価となりました。
「祖母は旅行が好きで、気に入ったものを少しずつ集めていたみたいです。まさかお土産品と思っていた置物まで見てもらえるとは思いませんでした。」
とおっしゃられていました。
旅行先で購入されたものは、ご家族から見ると「お土産」や「工芸品」という印象が強く、価値があるとは思われていないことも少なくありません。しかし、実際の買取現場では、ムラーノガラスなど、評価のできる置物や工芸品があり、お客様が驚かれるケースをよく体験します。
また、ガラス工芸品だけでなく、今回のように飾り棚には陶磁器や洋食器、クリスタル製品、美術品などが一緒に並べられていることも珍しくありません。一見すると価値が分からないものでも、拝見させていただくと評価につながるお品が見つかるケースもございます。
買取専門店 くらや 松山店では、ムラーノガラスやヴェネチアンガラスをはじめ、バカラ、ラリックなどのガラス工芸品のほか、骨董品、美術品、掛軸、茶道具、陶磁器など、幅広いジャンルの店頭買取・出張買取に対応しております。
「実家の飾り棚に長年飾ったままになっている置物がある。」
「海外旅行で購入したガラス工芸品が残っている。」
「価値が分からないので、一度見てほしい。」
そのような際は、お気軽に買取専門店 くらや 松山店までご相談ください。愛媛県内を中心に出張買取も承っております。