吉田博とは【版画家/洋画家/作品/水彩/新版画】 | 骨董品などの遺品整理・買取は口コミで評判の買取専門店【くらや】

吉田博は1876年に福岡県で生まれました。父は久留米藩士だった上田束秀之と言う人物でしたが、吉田博はのちに進学した県立校・修猷館で図画教師を務めていた吉田嘉三郎に才能を見込まれ、その養子となっています。同校を卒業後は洋画家の田村宗立の門下となり、続けて1894年からは上京し、小山正太郎が開く不同舎へ入門。水彩画も描いていきました。

その後、22歳の頃には明治美術会の記念展に油彩画作品を出品した一方で、翌年の1899年には仲間達と渡米。デトロイト美術館で日本画家水彩画展を開き大成功を収めています。以降は欧米諸国を巡り、パリ万国博覧会では展示した作品が褒状を受けるなど、国内外でその名を広めていきました。

1901年の帰国後は、明治美術会をベースとした太平洋画会を設立。同会で開催した展覧会では第1回、第2回共に10点以上の作品を出品し、画壇を盛り上げています。1903年からは再び海外へ渡り、アメリカやヨーロッパ、中東を巡りながら自身の画風を確立していきました。日本でも作品が文部省の買い上げとなったり、文展への無鑑査出品資格を得るなどして活躍し、40代半ばの頃には木版画の制作も始めています。

吉田博が木版画の制作を開始したのは当時版元をしていた渡辺庄三郎との出会いがきっかけで、依頼される仕事をこなす内に、1921年にはシリーズものを出版。関東大震災で被災した際には版木や作品の多くが失われましたが、数少ない作品を持ち3度目となる渡米を果たし、現地で高い評価を得ました。この時、それまで海外で流通していた粗悪品ともいえる版画作品を目にした吉田博は、その後版画作品により力を入れていきます。やがて自身も版元となって作品を出版。国内外の版画展にも作品を出品し、新版画の代表的作家の1人となっていきました。

戦時中は従軍画家として活動し、晩年は自身のアトリエで作品を披露したほか、太平洋画会の会長や日展の審査員など要職を務めていますが、19850年、74歳で息を引き取っています。

吉田博は自然風景を好んで描き、特に山岳画家と呼ばれるほど、山を描いた作品群が有名です。また、市井の人々の生活を描いた作品もあります。

木版画においては油彩画の描き方と水彩画の色合いを表現すると言う試みを見事に成功させ、中でも日光東照宮を描いた版画作品に用いられた96回も摺る技法・九十六度摺りは、繊細な情景を表す吉田博作品の代名詞ともなりました。

新版画以外にも、油彩画や水彩画作品など、多岐に及ぶ作品を手掛けています。

吉田博の作品は海外の著名人にも愛されており、精神医学者ジークムント・フロイトやダイアナ妃の部屋に、吉田博の手掛けた木版画が飾られていた事が知られています。

そのほか戦前の作品となる、1937年に第1回文部省美術展覧会で発表した『利尻姫沼』は、李氏朝鮮最後の王となる李王家が購入。海外でも名を知られていた吉田博のアトリエには、戦後、軍司令官のダグラス・マッカーサーの夫人が訪れるなどしました。

このように活躍をしてきた吉田博ですが、その背景では「絵の鬼」と称されるほど練習に励んだと言われています。

代表作

1926年発表のダイアナ妃が所持していた『光る海』（千葉市美術館が所蔵）。

1928年発表の『日本南アルプス集　駒ケ岳山頂より』（東京富士美術館が所蔵）などがあります。

■渡辺庄三郎

版元や貿易商でもあり1909年に渡辺版画店を立ち上げています。

若い頃に日本美術店で外国人客を相手にしたことなどから浮世絵の魅力に注目し、木版画で繊細な表現をすることに熱中したことで、新版画を生み出しました。

吉田博のほか、伊東深水や橋口五葉などとも連携し、多くの新版画の代表作家の制作に携わっています。