都路華香(つじかこう)は、1871年に京都で生まれました。父は友禅染の図案書きをしていたため、息子を画家として育てることも視野に入れており、10歳になる前から日本画家の幸野楳嶺の下で学ばせています。都路華香は通称を辻宇之助と呼ばれていましたが、弟子入りしてから“都路華香”の号を授かり、以降は晩年に再生菴と名乗るまでその号を称していきました。修行中は門弟の中でも非常に優秀な才能を発揮し、門下の四天王とも呼ばれるようになっていきます。
10代半ばの頃には家庭の事情から実家の手伝いをすることとなりますが、この間には染色や英語を修学。時折、幸野楳嶺の元にも訪れていたと言われています。こうして腕を磨いた都路華香は、1890年の内国勧業博覧会への出品作で褒状を受けたことをきっかけに、展覧会でたびたび受賞成績を納めていきました。また同じく画家の山本春挙や川合玉堂と親交し、遠方まで写生に出向いたりしています。
1899年になると都路華香は臨済宗の僧侶である竹田黙雷から禅学について教えを受け、作品にもそれが活かされるようになりました。まもなく展覧会の審査員や、京都市立絵画専門学校での指導を任されるようになり、一方で画家としても文部省美術展覧会にて作品を発表し三等を獲得。それからも文部省美術展覧会と同じ政府主催の展示会(官展と言います)にて活動していきます。50代の頃には同じ官展内の帝国美術院(帝展)の委員を務め、また帝展の会員になるなど、日本画壇の代表的人物の1人となっていきました。
多くの功績から、晩年には瑞宝章を授かりますが、1931年、60歳で息を引き取っています。
都路華香の作品は斬新とも言われる強い装飾性と色彩感覚が特徴的です。
幼少期から四条派について教わっており、さらに禅学について教わった経験も活かされ精神性も感じられます。また西洋画から新しい技術を学んでいると言った指摘もあり、まさに和洋折衷です。
都路華香の作品は発表当時から、のちには官展の場でも活躍を続けました。
菊池芳文や竹内栖鳳、谷口香嶠と並んで媒嶺門下の四天王と言う名も獲得しています。
1880年頃から幸野楳嶺の下で学んでいた当時、世間では近代的絵画の需要がありました。その中において幸野楳嶺の弟子達は、見事にその声に応えたと言うわけです。
また現在においてもアメリカにて多数の作品が所蔵されていると言ったように、海外や国内でも斬新な作品として評価され、近代京都画壇の代表的人物の一人となっています。
しかしこのように現代まで名が広がったのは、そもそも点在していた作品を主に京都国立近代美術館が調べ上げた事が起因しており、最近まではあまり名が知られた存在ではありませんでした。
ですのでこれから、よりその名前が伝わっていく事も予想できます。
代表作
1912年の第17回新古美術品展にて発表した『良夜』(京都国立近代美術館が所蔵)。
都路華香は波を描いた作品をライフワークとして描いており、静寂さの中に見える意味深な世界観が特徴的です。
他には1916年第10回文部省美術展覧会にて特選となった、複数の埴輪の姿が印象に残る『埴輪』。(こちらも京都国立近代美術館が所蔵)
1920年発表の朝鮮に渡った際の経験が活かされた、朝鮮内の日常を描いた『東菜里の朝、万年台の夕』(京都市京セラ美術館が所蔵)などがあります。
■幸野楳嶺(こうのばいれい)
四条派の系譜を受け継ぐ画家です。画家の家系出身ではないものの塩川文麟から学ぶなどして四条派として道を歩みます。幅広い作風を提示すると同時に後進の指導も熱心で、京都府画学校に携わったり、私塾を開いたりしました。
また作品内では写生技術も徹底しており、それは指導においても同様です。
■四条派
京都四条にて活躍する松村月渓をその始まりとした一派で南画が元になっています。実際は円山派と言う円山応挙が祖になる一派と合わさり円山四条派として京都を席巻し、今日でも一括として見られる事が多いです。
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