乃木希典(のぎまれすけ)は1849年12月に東京都で生まれました。なお父は長府藩士で、乃木希典は父から厳しく育てられたと言われています。9歳の頃に山口県に移るとまもなく詩文や、幅広い分野の武術を学び始めますが、10代半ばの頃には学者となることを目指すようになり、反対した父と対立し、家出。親戚であり、「明治の軍神」と後に称される兵学者の玉木文之進の下で学問を学びました。
その後、藩校である明倫館に進学し、並行して一刀流剣術の教えも受けると、仲間たちと長府藩の報国隊を結成。若くして武功を積んでいき、20代前半で陸軍少佐として西南戦争に参加しています。西南戦争時には、敵対軍に軍旗を取られてしまい、このことを乃木希典は長く悔いることとなりました。軍人として屈辱的と言える出来事を経ながらも、乃木希典はその才能を認められ、最年少で少将となり、一方で川上操六らとドイツへと趣き軍事について講義を受けると、帰国後は軍人の教育の重要性や軍服の重要さなどを広めていきます。自身もそれまで目立っていた放蕩生活を一切辞め、軍人としての風紀を保つべく厳かな振る舞いをしていきました。
以降は日清戦争や日露戦争にも参加。日露戦争においては2人の息子を戦死させるなど多大な犠牲者を出しながら、務めた第三軍司令として攻略に成功します。そして1907年には伯爵となり、次の年の1908年に明治天皇からの賜りで学習院長に任命されました。
後進の教育に努めながらも、日露戦争で多くの兵が殉死したことで自身を責め、凱旋後には明治天皇に自害の許可を請うた乃木希典でしたが、当時は天皇より「私が死んだ後にせよ」という旨の言葉をかけられたと言われています。その言葉の通り、1912年9月に明治天皇の葬儀日に合わせるかのように、自刃と言う形で乃木希典はこの世を去りました。
なおその時は妻も一緒に息を引き取っています。
乃木希典はこのように軍人として名を馳せた後に、明治天皇に忠義を尽くした所にも特徴があります。
ちなみにビールやワイン好きであった事。1904年11月の明治天皇の誕生日の祝典の場で、ビールを前に堂々とした構えを取っている写真が残されてもいるのです。それにワインの空き瓶が乃木希典を祀る乃木神社にあったりします。
そのほか漢学者の結城香崖の下で、詩文や漢籍についても学んでおり掛け軸や書状といった形で、乃木希典の作品も遺されています。
多大な活躍を見せた乃木希典ですが、意外にも戦略能力は高くなかったとされており、それでも軍人としての凛とした佇まいが日本軍の精神面を象徴していると言われています。
また明治天皇が亡くなったのに合わせて自刃をした所も含めて、立派な精神を併せ持っているという評価があり、彼自身は吉田松陰の影響も受けているようです。
代表作
優れた詩人でもあるとされている乃木希典の作品には、乃木三絶と呼ばれる『金州城』や『爾霊山』、『凱旋』があります。
ちなみに『爾霊山』は、日露戦争の戦地でもある中国遼寧省の二百三高地に、乃木希典が付けた名前でもあります。
■玉木文之進(たまきぶんのしん)
吉田松陰の叔父でもあり、彼の指導者でもあります。明倫館で務めた経験もあり、他にも松下村塾などでも教えたりしますが、1876年に教え子が戦争に参加した事を受けて自刃しました。
■吉田松陰(よしだしょういん)
思想家でもあり教育者でもあります。尊王攘夷派として天皇を支持し討幕論を提唱。
松下村塾にて様々な後進を育てるものの、暗殺を企てた事で安政の大獄の際に処刑となりました。
■明治天皇
第122代天皇でもあり明治新政府を立ち上げに成功しました。旧陸海軍人の精神教育の基本を作り上げ、大日本帝国憲法を広めました。
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