福沢一郎は1898年に群馬県北甘楽郡で生まれました。
父は事業家であり、また西洋に強い興味を持った人物だ
と言われています。
福沢一郎は、最初は彫刻家を目指しており、
日本の近代彫刻を代表する朝倉文夫から
教えを受けていました。
1922年の第4回帝国美術院展覧会では、
出品した彫刻『酔漢』が初入選を果たしています。
やがて洋画家としての転機は1924年に、
彫刻の技術を磨くために
フランスに渡った頃に訪れます。
絵画作品の制作に目を向けると同時に、
シュールレアリスムも学びました。
しかし1941年にシュルレアリスムと共産主義は関係する
としていた警察に、美術評論家の瀧口修造と共に
一時は拘束されています。
それでもシュルレアリスムの視点から
作品を作る事は止めず、やがて1991年、
93歳の時に文化勲章を受賞しました。
福沢一郎の作品は時代の移り変わりと共に
テーマを変えながらも、一貫して
人間の内面性を見つめていると言われています。
社会や美術、そしてそれらに関わる人々を
良い面も悪い面も含めて、
独自の色彩感覚と造形で描き出しました。
ちなみに初期の作品にはシャガールの影響が現れており、
昭和初め頃にはジョルジョ・デ・キリコや
マックス・エルンストの影響が
見て取れると言われています。
■シュールレアリスム
超現実主義とも呼ばれていますが、
理性を取っ払い夢や夢想などをモチーフに
人間の無意識を描いた、
20世紀に始まった手法及び思想です。
日本においては1928年9月から1993年6月まで発行された
『詩と詩論』上でシュルレアリスムについて掲載され、
滝口修造が1930年代に導入し始めたと言われています。
■共産主義
財産の独占的私有を無くす事で、貧困の差がなく
平等に幸福を手にする事が理想と掲げています。
■シャガール
フランス出身の画家でシュルレアリスムの一人として
捉えられています。
しかしシャガール自身はその呼ばれを否定していた
と言われています。
旧約聖書をテーマに、幻想的な作品を
多く描いているのが特徴です。
■ジョルジョ・デ・キリコ
シャガールと同様、シュルレアリスムの一人として
数えられていますが、他のシュルレアリスム作家を
否定する発言が残っています。
■マックス・エルンスト
こちらもシュルレアリスムの画家ですが
先に挙げた画家とは違い、シュルレアリスム運動を
率先して引っ張っていきました。
福沢一郎が影響を受けたとされる思想や画家を見ると
とにかく強くシュルレアリスムの傾向が
作品に出ているのが伺えます。
しかしあくまで日本を見つめたシュルレアリスムの作品
となるので、そこに福沢独自の視点が現れているのは
想像に難くありません。