増村益城は1910年に熊本県で生まれました。
実家は農家でしたが、幼少期から
漆芸に興味を持っており、
熊本市立商工学校漆工科を卒業すると同時に
辻永斎から教えを受けています。
また1933年には漆塗りの第一人者と言われている
赤地友哉に師事。
その後実在工芸展や日本漆芸院展、
新文展や日展と言った展覧会に出品し
乾漆技法による作品作りが認められ
1978年、68歳の時に人間国宝に認定されました。
1996年に息を引き取りますが
14歳の頃から漆芸をしてきた増村は
72年もの間、制作活動を続けていました。
その代表作としては、乾漆盛器や
乾漆提盤などがあげられます。
増村益城の作品は伝統をベースにしながらも
洗朱という黄味がかった朱色や
黒色の漆によるシンプルな一色で構成された
洗練された雰囲気が特徴といえます。
また麻と漆を交互に塗り
複雑な造形や絵付けを行わず、
薄造りの木地で作り上げると言った作り方も
氏を代表する作り方です。
・髹漆(きゅうしつ)
髹漆は漆塗りの一種です。
乾漆を含む素地造りから始まり、下地や上塗り、
仕上げも含める一連の工程の事を言います。
また、木材や竹、布や和紙と言ったものを用い
装飾をせずに漆りだけで行います。
素材の良さと漆の光沢、形の立体感を楽しむものとして
好まれている技法です。
・乾漆
乾漆とは、木材を除いた粘土や石膏などの材料で
素地を作る技法の事です。
そこに漆を塗りまた接着剤の目的も兼ねて麻布を張り
そして上から再度漆を塗ると言った工程も行います。
乾漆は自由に作りやすく
さらに頑丈かつ軽いと言った利点があり、
7世紀の奈良時代に
中国から伝わったと言われていますが
仏像造りにも活かされてきたようです。
増村益城はさらに縄胎や、紙胎の技法も使って
柔和な雰囲気の出る髹漆造りを行いました。
・紙胎
2000年以上前から使われている木や粘土などの原型に
紙を張ってから漆を塗る技法の事です。