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掛け軸・絵画
2020/07/22

速水御舟【日本画家/東京都/赤耀会】

速水御舟(はやみぎょしゅう)

速水御舟(旧姓:蒔田、本名:栄一)は、1894年8月に東京府東京市で生まれました。幼い頃から画業に就くことを考えていた速水御舟は、1908年に近くに住んでいた日本画家で、自身の強い愛国心を全面に打ち出した作風が有名な、松本楓湖が開く安雅堂画塾に入ります。

この頃には既に頭角を示しており、翌年の頃には展覧会に作品を出し、また1911年の巽画会で発表した『室寿の宴』は、一等褒賞の受賞と共に宮内省のお買い上げとなりました。

1913年には京都の南禅寺畔に『蟹港二題』や京舞の舞台美術などで知られている牛田鶏村。『菜園』や『出雲江角港』などが有名な小茂田青樹達と共に住み、発表してきた作品は下村観山や横山大観と言った、日本画の重鎮達に支持されていきます。

次の年には東京の目黒に移り住み、母貝の姓になると同時に『箙の梅』やインドの風景画が知られている赤耀会を結成し、新日本画運動を推進。なお再興日本美術院の院友にもなっています。赤耀会では『樵夫』を発表し、また巽画会の場では『萌芽』が1等賞を獲得。1930年にはローマの日本美術展の目的でヨーロッパに渡るなど活躍を続けますが、1935年3月に病気により息を引き取りました。

 

 

作風

速水御舟は繊細なタッチで様々な内容の作品を描いています。本物に近い写実性で、またやまと絵をベースとした装飾性の高い琳派のタッチを合わせようとした事で、後世の日本画の発展に貢献してきました。

 

■炎舞について

1925年に発表した『炎舞』は速水御舟の代表作としてよく取り上げられやすく、高く舞い上がる炎の中に飛び交う複数の蛾を描いており、最高傑作と言われています。同年の夏に家族と共に過ごした軽井沢での実際の光景を目にしたのが始まりで、同じ光景を毎日再現し蛾の写生も繰り返す事で作品を仕上げました。

儚げな雰囲気がありながらどこか怪しく、現実離れしたその作品は、1977年に重要文化財に指定されています。

 

■水墨での花鳥画も多く発表

1930年にヨーロッパに渡ってから、人物画や水墨での花鳥画を多く発表しています。その時期の代表作と言えるのが、掛け軸作品の『白鷺紫閃』で、雷雲の中で構図としては上下で飛ぶ二羽の鷺が描かれています。

こちらも農村で見た光景と言ったように実際の経験が元となった作品です。なお装飾的とされている宋の時代の院体画、特に花鳥画に影響されたことが、作風全体としての特徴の、写実性の始まりとも言われており、ある意味原点回帰と言えます。

 

■洛外六題について

1917年の第4回院展で発表した『洛外六題』は、院展の審査員から大きな反響を呼びます。普段は寡黙であると言う横山大観も「これ以上の作品は見たことがない」と評し、客観性をもって写実的に描き、和歌や大和絵に触発された速水御舟が宇治や野々宮、吉田社に梅ヶ畑と巨椋や今熊野の光景を描いています。

速水御舟は『洛外六題』によって同人として推薦されますが、残念ながらその『洛外六題』は関東大震災で失われてしまいます。以降の速水御舟は、後5年間ほど細やかな描写と青を貴重とした作品を多く出していきます。ちなみに南画的作風から写実性について意識した時期の作品でもありました。

 

 

様々な作風に挑戦した速水御舟

このように名声を欲しいままにしてきたと思われる速水御舟ですが、それでも人物画については苦手意識を持つ部分があるらしく、ヨーロッパに渡った時期にそれを感じたようです。しかしそれでも人物画にも同様に細やかな描写を試みるなど、様々な作風に挑戦しています。

なお2019年6月から8月にかけて、山種美術館にて広尾開館10周年記念特別展して「生誕125年記念 速水御舟」が開催されているなど、速水御舟の作品は今でも多くの人を惹き付けています。

 

 

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