西田幾多郎は1870年に、石川県で生まれました。生家は大庄屋を務めており、幼い頃から漢籍に夢中になるなど勉学に熱心だったと言われています。その後、県内の学校に通い哲学に強い興味を抱いたことから、1891年には帝国大学文科大学哲学学科選科へ入学。但しここでの学生生活は、選科生として入った関係で図書館への閲覧ができないなど厳しいものでもありました。またこの間には家族が病で亡くなり、父が事業に失敗するなどの苦難があり、この経験は西田幾多郎の思想や、のちの著書の執筆に大きな影響を与えています。
大学卒業後は帰郷して石川県で学校教師として務めますが、並行して20代後半からは禅の道に興味をもち、禅僧の雪門老師から禅を修学するようになりました。そして1901年には雪門老師から法名・寸心の号を貰い受けています。
やがて40代になる頃には学習院などの大学で教鞭を執るようになり、京都帝国大学では助教授に就任。また、1911年に発表した、善や宗教などについて語った著書『善の研究』は、西田幾多郎の思想家としての名を世に広める代表作となりました。
以降も教員として各校で倫理学や宗教学、哲学などの分野の講義を担当し、50代から60代にかけては帝国学士院会員として認められたほか、京都帝国大学の名誉教授に就任。また神奈川に転居し、慶應義塾大学の講師も務めています。この間には哲学に関する著書も多く発表しており、こういった功績から、西田幾多郎は70歳の時に文化勲章を受章しました。
そして1945年、75歳で息を引き取っています。
『善の研究』で純粋経験論を説き、国内でも代表的な哲学者の1人となったところに特徴があります。
西田哲学と呼ばれる哲学体系を形作り、多くの門下生が集い、京都学派のベースを作り上げていきました。
『善の研究』は日本で初めての本格的な哲学書と呼ばれており、西洋哲学に強く言及しながらも、深い探究心があると指摘されています。
西洋哲学では自身が認識するものとされる側の二元論に囚われないように、純粋経験の考えを持ち込んでいきました。
代表作など
1917年の『自覚に於ける直観と反省』と1920年の『意識の問題』など。
1927年に書いた『左右田博士を悼む』の原稿を、石川県西田幾多郎記念哲学館が所蔵しています。
■西田哲学
西田幾多郎の哲学説のことを指します。『善の研究』から既に確立されており、絶対矛盾の自己同一を証明し明治・大正から昭和初期において、学生にも強い影響を与えました。
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