林倭衛【洋画家】 | 骨董品などの遺品整理・買取は口コミで評判の買取専門店【くらや】

林倭衛(はやししずえ)

林倭衛は1895年6月に

長野県上田市で生まれました。

家庭の事情から10代前半の頃には上京し、

書店や印刷会社で働きながら

三年後に日本水彩画研究所夜間部に入っています。

なおこれは林倭衛の絵の直接の勉学経験としては

唯一の場所であるとされています。

その後、社会運動家で「近代思想」を発表した

大杉栄に代表されるアナーキストと親交。

制作活動はこの間も継続しており

1916年には二科展に出品した

『サンジカリスト』が初入選となり、二年後には

『H氏肖像』などで二科賞を獲得するなど

作家として注目を集め始めました。

こうして画家の有島生馬からは

「二科の宝物」と称されるようになります。

一方で1919年の二科展では、大杉栄について描写した

『出獄の日のO氏』を発表しますが、

警視庁から撤回命令が出されるなどの

騒動もありました。(なお焼却処理されずに

長野県信濃美術館にて保管されています。)

やがて25歳頃から5年間フランスへ渡り、

そこではセザンヌのアトリエにて作品を描き

フランスのゆったりした景色や

女性などの作品群を製作。

帰国後は春陽会会員となり、結婚して子供を授かる

と言うように充実した日々を送っています。

1931年に満鮮にて写生旅行をし、

1944年には春陽会を脱退。

そして翌年の1945年1月、

51歳で息を引き取りました。

作風

林倭衛自身がセザンヌを愛し、その作風が感じられる

簡素ながらも透明感のある、

独特の詩情感漂う作品を発表しています。

関連用語の細かい解説

■大杉栄

1885年に香川県生まれの、大正時代の中における

代表的アナーキスト(無政府主義者)です。

社会主義者の幸徳秋水と知り合った事で

無政府主義の考えを持ち、第1次世界大戦終了直後の

アナ・ボル論争の場で活躍を見せます。

自身の妻となる伊藤野枝も含めて

無政府主義の考えが伝達しますが、

1923年9月に伊藤野枝や甥と共に殺害されます。

■春陽会

1920年に日本美術院洋画部を

抜け出したメンバーで構成されました。

主な所属画家としては鳥海青児や

梅原龍三郎、小杉未醒などがいます。

目立った主義・主張はなく、

繋がりが近い者同士で集まっている

と言った特徴があります。

戦争特有の雰囲気が感じられる林倭衛の周囲

林倭衛について振り返ると、

その周囲の背景などからして

戦争特有の弾圧的雰囲気が感じられます。

林倭衛は帰国後に

大杉栄の手伝いを行っていたようで、

『出獄の日のO氏』を発表した事もあり

殺害されてもおかしくないようにも考えます。

(病気で亡くなっています。)

なお林倭衛の娘である林聖子は、

文壇バーの「風紋」を開いたり

イベントの場でも顔をよく出しています。