中村正直(敬宇)とは【作品/功績/思想家/文学博士】 | 骨董品などの遺品整理・買取は口コミで評判の買取専門店【くらや】

中村正直(なかむらまさなお/中村敬宇)は1832年5月に江戸で生まれました。なお号は敬宇と称し、父は幕府の下級役人であった中村武兵衛です。中村正直は幼い頃から儒教の教えや筆法についての指導を受け、10代半ばの頃からは塾で漢学や蘭学を。さらに昌平坂学問所にて儒学や英語を学び、23歳になる頃には同学問所の教授として勤められるほどとなります。この才能から、1862年には幕府に儒者として仕えるようになりました。

その後、30代半ば頃には幕府からの通達で英国留学生の監督役として渡英。2年後には幕府崩壊のために帰国せざるを得ない状況となっていますが、帰国の際、イギリスでできた友人よりサミュエル・スマイルズの『自助論』を手渡されます。中村正直はこれに感銘を受けたことをきっかけに、帰国後は同書の翻訳を手掛け大ヒットしたほか、並行して静岡の学問所で教壇に立ちました。

その後1872年には上京して大蔵省で働くようになりますが、翻訳活動も継続し、ジョン・スチュアート・ミルの『自由之理』の出版も行っています。翌年には私塾である同人社を立ち上げ、その次の年には明治始まりの啓蒙・思想を伝える団体である明六社に参加。そのほか開設された東京女子師範学校の初代校長を務めるなど、教育者としても尽力していきました。

晩年は日本初の文学博士や貴族院の議員なども務めますが、1891年、58歳で息を引き取っています。

中村正直は『西国立志編』や『自由之理』によって、明治初期において人が自由に政治に関わる必要性を説いた民権思想を根付かせたと言う特徴があります。

さらに私塾の同人社の立ち上げや明六社においても、18世紀フランスから誕生した啓蒙思想を広めたり、他にも女子教育や盲唖教育にも力を入れています。

また“江戸川の聖人”と言う呼ばれも持っていました。

『西国立志編』は明治維新で開かれる日本において、当時のそれに迷う若者の指針となったと呼ばれています。「天は自ら助くる者を助く」と言う言葉が有名で、自らの足で進む事を教えているのです。

なお翻訳前の名前は『Self-Help, with Illustrations of Character and Conduct』です。

そのほか『自由之理』はジョン・スチュアート・ミルの「On Liberty」を訳したものです。

明治時代前半の一般の人達の自由と権利について強く説いた、自由民権運動を強く後押しするものとなっており、また西洋の市民社会の仕組みを伝えると言う側面があります。

他の作品

1880年に出された上・下巻による『敬宇文』（早稲田大学図書館が所蔵）。

なお著者には他に柳沢信大の名も記されています。

他には1868年に出した上・下巻の『敬天愛人説』。造詣が深かったキリスト教と儒教のアプローチで「敬天愛人」を説く内容となっています。

■明六社

1873年に森有礼の提案により生まれました。中村敬宇の他に福沢諭吉や加藤弘之などを、社員として設定している点がユニークです。

欧米の考えを伝えるものとして講演や機関誌も出していましたが、1875年に機関誌が終了となったことで明六社自体も終わりとみなされています。