ドームはフランスのガラス工芸メーカーです。
「ドーム」とはブランド名ですが
これはガラス工房の
オーナー一族からとったもので
「ドーム」という呼び方の他に
工房名にもあった
「Daum Frères(=ドーム兄弟)」から
通称『ドーム兄弟』とも言われています。
ドームは1878年に
ジャン・ドームによって創業しました。
彼は普仏戦争後、ドイツの占領を避けて
移住してきたフランスのナンシーで、
ガラス工場の経営者となりました。
これがのちにドームとなる工房の始まりです。
「ラ・ヴェルリ・ド・ナンシー」
と名付けられた工房では
1879年から長男のオーギュスト・ドームが
1887年から次男のアントナン・ドームが
働き始めました。
ドーム兄弟が工房で働き始めてしばらくすると
彼らはパリの万国博覧会に
テーブルウェアを出品します。
残念ながら賞は得られませんでしたが
そこで同じくナンシーの職人、
エミール・ガレの芸術性の高い作品が
数々のメダルを受賞しているのを目の当たりにし、
ドーム兄弟は1891年から
美術工芸品としてのガラスづくりを
スタートさせました。
各工程に優秀な職人を集め
カットや浮彫り、エナメル彩色など
様々な技術を駆使した作品は
シカゴ万博やナンシー装飾美術展を始めとして
数々の賞を受賞するようになりました。
同時期に社名を
「Daum Frère et Cie(ドーム兄弟)」に改名し
その名と作品の素晴らしさは、
世界に広まっていきました。
1897年、1900年には万博での受賞と共に
オーギュストとアントナンが順に
レジオン・ドヌール勲章を授かります。
1909年に兄のオーギュストが亡くなった後も
弟のアントナンは社名を
「Daum et Cie(ドーム)」とし
ドーム特有のアンテルカレールや
ヴィトリフィカシオンといった技法を活かして
作品を制作し続けました。
1987年に工房は
ドーム一族の経営ではなくなりましたが
現在でもドームは写実的な風景が
繊細に描かれたデザインを得意とし
作品の制作を続けています。
ドームの商品は特に
その丁寧な造りが評価されており
塩入れなどの小物にも
繊細で美しい絵付けが施されています。
絵柄は自然に恵まれていたナンシーにあった
美しくのびのびと咲いた
草花や風景がメインです。
また特徴的な技法としては、
ガラス素地に絵模様を描いて
さらにガラスをかぶせる技術で
模様の立体感を引き出すアンテルカレールや
粉末状にした色ガラスをまぶして再加熱し、
素地になじませることでガラスの地に
より多くの色を表現する
ヴィトリフィカシオンなどが特徴的です。
デザインにおいては130年間の間に
350人以上もの芸術家たちとの
コラボレーションを実現しており
現在でも多種多様な作品が
造られ続けています。