セーヴルは
フランスのセーヴルで生産された磁器の事です。
繊細なデザインの磁器は
古くからフランスの王立製作所で
制作されています。
元々、セーヴルは
民間の企業で制作されていました。
自分たちが制作した軟質磁器に
柿右衛門や古伊万里風の絵付けをしていた
デュポア兄弟が
フランスの大蔵大臣に招かれ、
パリの東に位置するヴァセンヌ城で
窯を構えなおしたのが始まりです。
しかし、それより約30年も前に
硬質磁器を製造して大流行していた
ドイツのマイセン窯に対抗しようという
フランスのこの取り組みは、
デュポア兄弟では成功しませんでした。
その後も研究は続き
陶工のフランソワ・グラヴァンが先頭に立ち
技術を磨くと
「ブリュ・ド・ロワ(国王の青)」
と呼ばれる濃紺色や、
「クラウデッド・ブルー」と呼ばれる色彩など
新たな技術を生み出すことに成功します。
これらは貴族たちの関心を集め
やがてヴァセンヌ窯はルイ15世や
ポンパドゥール夫人の庇護下となりました。
1756年には、
ポンパドゥール夫人の尽力により
窯はセーヴルへ移動し、数年後には
「王立セーヴル製陶所」が創業されます。
芸術に精通していたポンパドゥール夫人は
自ら製造工程の改善を行ったり、
当時人気を得ていた画家や彫刻家を招いて
より芸術性の高い作品の製造に
力を注いでいきました。
この時期誕生した色彩のひとつ
「ローズ・ド・ポンパドゥール(ポンパドゥールの薔薇色)」は、
ポンパドゥール夫人が特に愛した色でしたが
残念ながら当
時の科学アカデミー総裁の死と共に
調合法は失われています。
美しい彩色に加え、フランスがやっと
硬質磁器の焼成に成功したのは
1768年のことでした。
リモージュ近郊で
上質な陶磁器に必要不可欠な原料、
カオリンが発見されたのです。
セーヴル窯は、東洋磁器への憧れから誕生した
マイセン窯を目指して創立されましたが
硬質磁器完成後の作品のデザインは
東洋風というより
それまで描いていたデザインを
活かしたものとなりました。
ロココ調で、白磁に華やかな風景画や草花、
そして金彩を施した豪華さがその特徴です。
その後セーヴル窯は
フランス革命の影響で一度破壊されますが、
1804年、ナポレオン1世によって
「国立セーヴル製陶所」として
再び窯を開きます。
作品デザインはロココ調のものだけでなく
ギリシアやエジプト風の
荘厳なデザインも出来上がり
1855年のパリ万国博覧会では
金賞を受賞し世界に名を広めていきます。
そして1876年、
製陶所はセーヌ川沿いにある現在の場所に
「国立セーヴル陶磁器製作所」
として設立されました。
現在は生産量が限定され
ほとんどがフランスの
オフィシャルギフトとされているため
一般に流通することは極めて稀で
「幻の窯」とも呼ばれているようです。