エルメス社の母体になったのは、ティエリー・エルメスが1837年にパリに開いた馬具工房で、ナポレオン3世やロシア皇帝などを顧客として発展しました。
ティエリーの孫にあたる3代目のエミール=モーリス・エルメスは事業の多角化に着手し、1892年には、馬具製作の技術を基にエルメス最初のバッグである「サック・オータクロア」を製作しました。1927年に腕時計を発表、さらに服飾品・装身具・香水などの分野にも手を広げ、それらの製品のデザイン、製造、販売をすべて手掛ける会社となりました。
1980年代からエルメス社はシャツや帽子を発注していた会社を次々と買収していきましたが、リシュモン系列やLVMHグループの買収戦略とは異なりました。職人技の維持を第一優先にした為、買収対象は比較的小規模の会社に留まっています。エルメスと資本関係のあるブランドには、食器のサンルイ、ピュイフォルカ、英国靴のジョン・ロブなどがあります。
ケリーバッグとバーキンはエルメスを代表するバッグで、世界的に人気があり、ケリーバッグはサドルバッグをレディース用に改良して1935年に発売したもので、当初は「サック・ア・クロア」という商品名で売られていました。「サック・ア・クロア」を「ケリーバッグ」と改称したきっかけは、1955年モナコ公妃となっていたグレース・ケリーが、パパラッチを避けたときに妊娠中の腹部をとっさに持っていたこのバッグで隠しました。その写真が雑誌に掲載され一躍その認知度が高まりました。エルメスはこれに便乗しモナコ公国の許可を得て、1956年「サック・ア・クロア」を「ケリーバッグ」と改称しました。バーキンは1984年、第5代社長のジャン=ルイ・デュマ=エルメスが、航空機の機内でイギリス出身の有名女性歌手と隣合わせになり、彼女がボロボロの籐の籠に何でも詰め込んでいるのを見て、整理せずに何でも入れられるバッグをプレゼントさせてほしいと申し出たエピソードに由来します。
2004年ジャン=ポール・ゴルチエがマルタン・マルジェラの後継としてデザイナーに就任しました。2004年のパリ・コレクションではエルメスの伝統である馬具、皮革製品を意識し、伝統に配慮し、オレンジや黒を中心とした鋭角的でブランドの風格を意識したデザインを発表しました。2016秋冬コレクションより、ナデージュ・ヴァネ=シビュルスキーがアーティスティックディレクターを務めています。