安倍安人は1938年に大阪市で生まれました。元は渡辺と言う苗字でしたが、安倍家の養子となった事で苗字も変わっています。20歳の頃から洋画家・宮本三郎が開く現代美術研究所内の教室や、中央美術学園でも学び、1967年には自身初の個展を行いました。
また一方で、30代からは陶芸の世界にも興味を持ち、愛媛県松山で初めて焼き物作品を発表。以降も多くの作品を作り上げていきます。1986年には岡山県内の寒風陶芸の里に新しい窯を設け、作陶に打ち込んでいきました。その3年後には造形集団・石虫会を立ち上げ、50代後半の頃には池田満寿夫・安倍安人二人展を開催。翌年には、自身の作品制作を続けながらも、島根デザイン学校内で陶芸部門企画担当及び客員教授として教鞭を執っています。
このように画家という立場から、陶芸家としての立場も確立した安倍安人は、1999年、島根県内で木の花窯横田塾の立ち上げに参加。2006年はラトビア・国際陶芸アカデミーリガ大会に参加したほか、三重県の第1回パラミタ陶芸大賞展では入選となりました。
以降は国外の作品展へも積極的に出品し、各地での個展も行っています。
陶芸をアート作品だとも捉え、強い美意識で備前焼作品を制作しています。
またユニークなのは色付けだけでなく、自由かつ繊細な造形アプローチをしているのも特徴の一つといえるでしょう。
古備前を継承しながらも、繊細さや大胆さのある作品は国際的にも評価が高く、アメリカのメトロポリタン美術館やサンフランシスコのアジアンアートミュージアムなどに収蔵されています。
代表作
『彩色備前水指』や『備前茶碗』、『備前水指』などを台湾の故宮博物院が所蔵しています。
■備前焼
日本六古窯の一つであり岡山県備前市のあたりで作られています。
良質の土を使用し、釉薬は使用せずに作られるため、土の風合いが感じられるあたたかみのある作品が多いです。基本的に絵付けなどはされないものの、焼成時の窯の中で、灰や火のあたり具合によって生まれる窯変による模様は特徴的です。
■池田満寿夫(いけだますお)
版画家や洋画家でもあり女性をテーマにした作品群が有名ですが、陶芸作品も代表的な『般若心経』シリーズを始めとして、非常に多く制作しています。晩年、特に作陶に打ち込み、自身の窯も持っていました。