彫金家の海野勝珉は1844年、水戸で生まれました。
水戸藩士であった初代海野美盛から金属彫刻を学び
後に水戸彫金家の同藩士萩谷勝平から
金属工芸の技術を学びました。
その後1868年の明治初年に上京し
1876年に駒込千駄木町で開業しています。
自身の創作活動を続ける中では、
1877年に第1回内国勧業博覧会、
1881年に第2回内国勧業博覧会で褒状。
1890年に開催された第3回内国勧業博覧会では
出品した「蘭陵王」が妙技一等賞を受賞しました。
翌年、東京美術学校の助教授に就任し
後に同校の教授となります。
この期間に加納夏雄に学び、
1895年の第4回内国勧業博覧会では
審査員を務めるまでとなりました。
そして翌年、52歳の時に
帝室技芸員に任命されています。
その後は勲六等瑞宝章や従四位勲四等なども
授けられました。
海野勝珉らの時代には、多くの刀装金工家が
貿易用に欧米人に人気のあった流行りのデザインで
花瓶や煙草箱、アクセサリーを制作していました。
しかし、海野勝珉は
新しい金属工芸の時代を模索しながら
その評価を高めていきます。
その努力と苦労もあり明治期に入ると
一躍注目され、その近代的な作品は
人気を博すことになります。
彫金技法には、一般的に
「彫る」、「打つ」、「嵌める」技法がありますが
海野勝珉は、鋭角な鑿(のみ)で金属を彫刻する
「片切彫」や「肉彫」を得意としました。
象嵌においても優れた技術を発揮し
海野勝珉の作品には、様々な色金を合わせた
豊かな色彩表現がちりばめられています。
写実的な表現の中に
優雅な美しさを魅せる作風が特徴的です。
代表作である「蘭陵王置物」は立体的な置物像で
色金を組み合わせた色彩豊かな作風を確立しています。
総じて言えば、錬金や肉象嵌
さらには立体的な表現と多種多様な色金の組み合わせで
作品を色彩豊かに仕上げる技術が
海野勝珉の作品の特徴と言えるでしょう。
海野勝珉が制作した「蘭陵王置物」や「太平楽置物」は
近代の彫金の作品において金字塔的な作品として
評価されています。
写実性を重視しながらも立体的かつ色彩感溢れる作品は
近代の彫金作品としては特別な作品として
高い評価を受けています。
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