木工芸家の大野昭和斎は
1912年に岡山県で生まれました。
14歳で西阿知尋常高等小学校を卒業すると同時に
指物師であった父に象嵌や木工芸を学び始めます。
23歳になると文人であった柚木玉邨から
「昭和斎」を授号し、その2年後、
中四国九県連合展に「松造小箱」を出品して
特別賞を受賞しました。
それからは、1963年に日本工芸会中国支部展に
出品した「桑盛器」が支部長賞を受賞し
翌1965年には日本伝統工芸展で
初入選を果たすなど、数々の展覧会で
賞を受賞しています。
やがて62歳の時には伝統工芸の保護と
後進の育成を目的に「木創会」を創立し
1984年、72歳の時に、木工の分野で
人間国宝の認定を受けました。
翌年には人間国宝認定記念展を開催し
1987年、勲四等旭日小綬章を受賞しています。
もともと大野昭和斎は、木竹工芸の職人だった父に
厳しくその技術を学びました。
木工芸の分野では父以外には師匠を求め
全て独創で木工芸を芸術の域にまで高めています。
作品の素材には桑や欅、柿、黄楊木、肥松など
多種多様な木材が用いられ
箱の四方の直線に線象嵌を用いるなどして
指物独特の直線の美しさを表現しました。
日本工芸展にはこういった「指物」、
「象嵌」などの技法を用いた
精巧な作品を出品しています。
また、大野昭和斎は木目に金箔を刷り込む
独自の技法、「杢目沈金技法」を創案しています。
拭き漆を重ねると、金色は一層深く輝き
その木目も一層引き立つ高度な技法です。
大野昭和斎は、指物、象嵌、杢目沈金技法など
あらゆる面で秀でていました。
その確かな技術を見事に作品の中で表現し
調和のとれた秀れた作品を残しています。
生活が困窮する時期も乗り越え、数々の賞を受賞し
木工芸の第一人者として
その地位を揺るぎない物に確立しました。
また、「木創会」を創立し
後進の育成にも尽力しています。
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