漆芸家中野孝一は、1947年に石川県で生まれました。
20歳で東京デザイン研究所商業デザイン学科を卒業し
その2年後、大場松魚に師事しています。
その後1971年には
第18回日本伝統工芸展に初出品した作品が
日本工芸会会長賞を受賞したのをきっかけに
数々の賞を受賞して行きました。
また、42歳の時には
石川県立輪島漆芸技術研修所の講師、
50歳の時には石川県挽物轆轤技術研修所
非常勤講師に就任しています。
これらの鉱石が評価され、2005年に紫綬褒章を受賞し
2010年、63歳の時に「蒔絵」の分野で
重要無形文化財保持者に認定されました。
中野孝一が得意とする「蒔絵」は
漆芸の装飾技法の一つですが
これは漆で描いた下絵に
金粉や銀粉などを蒔き付けていき
文様を描いていくものです。
描いた模様には貝を使って絵柄を描く「螺鈿」や
金属板を使用する平文(ひょうもん)、
卵の殻を使う「卵殻」など様々な技法を
駆使して装飾をし、絵柄を表現します。
その中でも中野孝一は、特に
「高蒔絵」を用いることが特徴的で、
変り塗を独自に応用した蒔絵や
研出蒔絵、平文、螺鈿、卵殻などを駆使した
多彩な表現を得意としています。
蒔絵のモチーフには、栗鼠(りす)や兎などの
可憐な小動物を用いることが多く
躍動感のある生き生きとした小動物を
軽妙に表現しています。
中野孝一は木地作りから下地作り
蒔絵までの工程を一貫して自身で行っており、
その漆芸の風合いを大切にしています。
特に、漆がもつその美しく柔らかな黒を
引き立たせる為に巻絵には金粉を用いています。
また、漆を盛り上げて塗り込み立体的な蒔絵を施す
「高蒔絵」の技術は、その作品の気品を
一層際立たせます。
これは高い評価を受けており
中野はその高度な漆芸の技術を
日本のみならず海外にも広く紹介しています。
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