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日本の戦後美術史において、**香月泰男(1911-1974)**は「シベリア・シリーズ」で広く知られる画家です。第二次世界大戦中のシベリア抑留という過酷な体験を絵画として昇華し、戦争の悲惨さや人間の尊厳を表現しました。その作品は単なる戦争画にとどまらず、人間の存在や生の根源に迫る力を持っています。
また、香月泰男は故郷・山口県三隅町(現・長門市)を生涯の拠点とし、自然や家族を愛しむ温かな作品も数多く残しました。戦争を描いた「シベリア・シリーズ」とは対照的に、日常の風景や家族の姿を描いた作品は、観る人に安らぎを与えます。
当店「買取専門店 くらや 松山店」でも、香月泰男の作品はお客様からのお問い合わせが多い作家のひとりです。本記事では、香月泰男の生涯や代表作、そして美術市場における評価や買取のポイントについて詳しくご紹介します。
1911年、香月泰男は山口県大津郡三隅村に生まれました。幼少期から絵を描くことが好きで、その才能を見抜いた教師の勧めもあり、画家を志すようになります。地方の小村で育ちながらも、美術への情熱を持ち続け、やがて東京美術学校(現・東京藝術大学)に進学します。
1931年、東京美術学校に入学した香月は、藤島武二ら著名な教授陣のもとで油彩画を学びました。在学中から写実的な描写力に優れており、卒業後は新制作派協会展などで入選を重ねます。しかし、1930年代後半から戦争の影が濃くなり、香月もまた戦争の渦に巻き込まれていきました。
1945年8月、終戦直後にシベリアへ抑留され、厳しい極寒の地で約3年間を過ごします。この体験が香月泰男の人生と画業に大きな影響を与えることとなります。
シベリアでの抑留生活は極限状態の連続でした。飢えや寒さ、仲間の死。香月はその体験を忘れないため、抑留中の記憶をメモとして残し、帰国後に膨大な作品群として描き出しました。それが代表作となる「シベリア・シリーズ」です。
このシリーズは全部で57点からなり、抑留中の惨状や心の叫びを表現したもので、日本美術史上きわめて重要な作品群とされています。
香月の作品は戦争体験を背景にしつつも、人間の存在を深く見つめた普遍的な表現が魅力です。
「シベリア・シリーズ」は黒や灰色を基調とした重厚な色彩が特徴です。抑留者の苦悩する表情や寒々しい風景は、観る者に強い印象を与えます。代表作「一人の声」や「凍土」は、シベリアの極寒と孤独を象徴する名作です。
戦争の悲惨さを描いた一方で、香月は家族や故郷の自然を描いた作品も多数制作しました。自宅の庭先、身近な花々、愛する子供たちをモデルにした作品は、柔らかな色彩で表現され、観る者に安堵感を与えます。
香月の画風は一見して重々しく見えますが、構図の巧みさと色彩の微妙なニュアンスが際立ちます。黒の深み、灰色のバリエーション、時折差し込まれる鮮やかな赤や青が、静かな緊張感を生み出しています。
香月泰男は戦後美術を語る上で欠かせない存在として高く評価されています。近年、戦争体験を伝える作品の重要性が再認識され、オークションでも人気が高まっています。
・油彩画は特に高評価
香月の油彩作品、とくに「シベリア・シリーズ」や戦後の家族を描いた作品は市場でも非常に高値で取引されます。
・版画・素描も人気
油彩に比べると手頃な価格帯ですが、版画や素描もコレクター人気が高く、安定した相場が続いています。
・資料性のある作品は評価アップ
抑留体験のメモやスケッチ、関連資料が付属する場合は、作品の価値がさらに高まります。
当店「くらや 松山店」では、香月泰男の多様な作品をお取扱いしています。
・油彩画(特に戦争・抑留体験や家族をテーマとした作品)
・素描(水彩・鉛筆)
・版画(リトグラフ、木版画)
・関連資料やスケッチブック
・作品の状態:カビ、シミ、退色などがないか
・署名や印章の有無
・作品の来歴:購入証明や展覧会出品歴があれば評価アップ
・付属品:額縁や共箱、鑑定書なども重要です
先日、松山市内のお客様から「実家の整理をしていたら、祖父が大切にしていた絵が出てきたので見てほしい」とのご依頼をいただき、出張買取にお伺いしました。お客様のご自宅で拝見したのは、香月泰男の1961年頃の水彩画「太陽」でした。
額装された作品からは、香月作品特有の力強さと静けさが同居する独特の雰囲気が伝わってきます。漆黒の円を中心に放射状に広がる金色の光は、まさにタイトルの通り「太陽」を表現しており、彼の戦後の制作姿勢を象徴するような一枚でした。作品の右下にはしっかりとしたサインがあり、香月泰男夫人の香月帰美子氏による証明書も付属していたため、作品の信頼性は非常に高いものでした。
お客様からは「祖父が生前とても大切にしていた作品なので、きちんと価値を分かってくれる方に託したい」というお話をいただきました。作品の保存状態も良く、額縁も当時のものがきれいに保たれていましたので、適正な市場評価を行った上で査定額をご提示しました。結果として、お客様にもご納得いただける形でお譲りいただきました。
香月泰男の作品は「シベリア・シリーズ」を中心に、戦争体験を題材とした作品がよく知られていますが、この「太陽」のような自然をモチーフにした作品も人気が高く、美術市場でも需要があります。今回のように証明書が付属しているケースではさらに評価が高まります。
当店ではこのように、香月泰男をはじめとする近代洋画の出張買取を行っております。ご依頼いただければ、経験豊富なスタッフが直接お伺いし、大切なお品物の価値をしっかりと見極めます。
「買取専門店 くらや 松山店」では、香月泰男をはじめとする近代洋画・日本画・骨董品・工芸品など、幅広いジャンルの出張買取を行っております。
・査定料・出張費はすべて無料
・愛媛県内はもちろん、近隣地域にも柔軟に対応
・ご自宅での査定なので、重い額装作品や点数の多いお品物も安心
・経験豊富な鑑定士が丁寧にご説明しながら査定
今回のように、証明書や付属品のある作品は特に高評価が期待できます。また「売るかどうか決めていない」「価値だけ知りたい」という方もお気軽にご相談ください。
お電話一本で日程調整ができ、お客様のご都合に合わせてスタッフがご自宅まで伺います。大切なお品物を安心して託していただけるよう、誠心誠意対応させていただきます。
香月泰男の作品は、戦争の悲惨さや人間の尊厳を描き出すとともに、故郷や家族を愛する静謐なまなざしが宿る、戦後日本美術を代表する貴重な文化遺産です。「シベリア・シリーズ」はもちろんのこと、今回ご紹介した「太陽」のような自然をモチーフにした作品や、家族の姿を描いた作品群も、観る者に強いメッセージを届け続けています。
近年、戦争体験を直接語る人が減るなかで、香月泰男の作品が持つ価値はさらに高まっています。それは金銭的な価値だけでなく、「歴史の証人」として後世に伝えるべき意義のある芸術であるという点でも重要です。
しかしながら、長年保管されている間に劣化が進んでしまったり、適切な査定を受けないまま市場に出てしまうと、本来の価値が正しく評価されないケースも少なくありません。額装の劣化や紙のシミ、サインの退色などは査定額にも大きく影響します。さらに、共箱や証明書といった付属品の有無は作品の真正性を裏付ける重要な要素であり、評価額を大きく左右します。
私たち「くらや 松山店」では、香月泰男の油彩画・水彩画・素描・版画はもちろん、展覧会資料やシベリア抑留関連のスケッチ類まで幅広く査定・買取を行っています。美術館学芸員経験者や美術市場に精通したスタッフが在籍しているため、安心してお任せいただけます。
また、今回のエピソードでもご紹介したように、当店は 出張買取サービス も行っております。重い額装作品や点数の多いコレクションでもご自宅にいながら査定できるため、多くのお客様からご好評をいただいております。査定料や出張費は一切かかりません。
「祖父母が集めていた絵があるが価値が分からない」「作品を手放すか悩んでいる」という方も、まずはお気軽にご相談ください。査定のみのご依頼でも、専門のスタッフが一点一点丁寧に拝見し、作品の歴史的価値や市場動向も含めた正確な評価をお伝えいたします。
香月泰男の作品は、時を経ても色あせない強い力を持っています。大切に受け継がれてきた作品を、次の世代へつなぐお手伝いができれば幸いです。
【店舗情報】
買取専門店 くらや 松山店
所在地:愛媛県松山市天山1丁目13-5 イオンスタイル松山3階
営業時間:10:00~19:00(年中無休)
お問い合わせ:089-950-4334
駐車場 : あり/無料 1,140台
出張査定・相談無料|予約不要|初めての方も安心