- 骨董品松山店2023/09/11
骨董品・美術品、遺品整理の高価買取
こんにちは、絵画や版画の買取専門店『くらや松山店』です。木版画、リトグラフ、シルクスクリーンの価値をプロの鑑定士がしっかりと査定し、買取を行っています。
〈畦地梅太郎〉という版画家をご存じでしょうか?画家や版画家などたくさんの有名な作家がいる中で、今回ご紹介する畦地梅太郎は愛媛県に所縁のある作家です。畦地梅太郎といえば、山岳風景の木版画や〈山男〉のシリーズが非常に有名で、〈山の版画家〉としても知られています。
名前を聞いたことはなくても、絵を見れば一度は見たことがあるという方は多いのではないでしょうか。宇和島の三間インターチェンジを降りてすぐの所にある〈道の駅みま〉には、畦地梅太郎記念美術館があります。愛媛近郊にお住まいの方であれば、その名を目にする機会も多くあるのでは…。
畦地梅太郎は、1902年(明治35年)12月28日に愛媛県北宇和郡二名村(現在の愛媛県宇和島市三間町)で誕生。芸術の道を志し、当初は油彩画家を目指していましたが、家が貧しかったこともあり、美術学校などへの進学はかないませんでした。
船員や石版印刷工として一旦は就職をし、その後1920年(大正9年)に愛媛県から上京。1926年(大正15年)には内閣印刷局に入局をします。この内閣印刷局への入局が、畦地梅太郎の人生の大きな転機となったのです。
仕事の空き時間を利用して、畦地梅太郎はあることを行っていました。あることとは何だと思いますか?職場にある材料を使って、鉛版画を作成していたのです。これが版画家としての第一歩となりました。
翌1927年(大正16年)、日本創作版画協会第7会展に出品した作品が入選。これを機に内閣印刷局を辞め、版画の道に進むこととなります。その後、平塚運一・恩地孝四郎・前川千帆らに師事し、日本版画協会会員になったのは1932年(昭和7年)のことでした。
1936年(昭和11年)には、初の版画集となる〈伊豫風景〉を発表。翌1937年(昭和12年)の夏、軽井沢へ出かけた際に〈浅間山〉に魅せられて、それから制作された作品の多くは山岳風景を描いたものになりました。
その後日本は第二次世界大戦へと突入し、畦地梅太郎は戦争真っ只中であった1943年(昭和18年)に、東北アジア文化振興会勤務のため満州へと渡ることに。翌年の1944年(昭和19年)には、満州をテーマに作成された画集〈満州〉を発表しました。
終戦後の1952年(昭和27年)頃から制作し始めたのが、のちに畦地梅太郎の代表作シリーズとなる〈山男〉を題材にした作品です。〈第2回サンパウロ・ビエンナーレ(1953年・ブラジル)〉や〈第4回ルガノ国際版画ビエンナーレ(1956年・スイス)〉では、日本代表として作品を出品したことも。
名実ともに日本を代表する版画家へとなっていった畦地梅太郎の作品は、1971年(昭和46年)宮内庁にも買い上げられました。〈涸沢の小屋〉〈頂上の小屋〉など5点の作品です。
1976年(昭和51年)には日本版画協会の名誉会員となり、その後様々な賞を受賞していきます。1985年(昭和60年)に生まれ故郷である愛媛県から〈愛媛県教育文化賞〉〈愛媛新聞賞〉を受賞。また、翌1986年(昭和61年)には〈三間町名誉市民〉、1996年(平成8年)には〈町田市名誉市民〉に選ばれました。
1999年(平成11年)4月12日、肺炎のため96歳で逝去。畦地梅太郎が亡くなった後の2003年(平成15年)には生まれ故郷である愛媛県宇和島市三間町に、〈畦地梅太郎記念美術館〉がオープンしました。
畦地梅太郎は数多くの作品を残していますが、〈山の版画家〉と言われるように代表的なものは山岳風景を描いたものと〈山男〉のシリーズになるでしょう。また、〈山男〉と一緒に描かれている雷鳥など、山々の生き物を描いた作品も数多く残っています。
他には故郷である愛媛県の風景を描いた作品も多く、中でも〈石鎚山〉を題材にした作品が有名です。畦地梅太郎が生涯の集大成として最後に作成した作品も〈石鎚山〉。これは、愛媛県県民文化会館の緞帳の原画となった大作でした。
畦地梅太郎の作品の買取において、人気が高く買取価格も高額となるのは〈山男〉のシリーズ。その中の一部の作品名をここでご紹介します。
▼1950年代
山男、スキーの人、なげく山男、風
▼1960年代
白い山男、山の声、遠い日の山、山男の像、鳥とともに
▼1970年代
鳥をいだいて、家族、いかりの親子、山の親子、山の家族
▼1980年代
山湖のほとり、窺う、祈り
後に本人談として「山男は私なんです。」と言っていることから、各作品には作成された当時の畦地梅太郎の心情が表現されており、作品を通してその時々の思いが伝わってきます。また、1970年代頃からの山男シリーズで数多く描かれているテーマが〈家族〉。この頃の作品は優しい表情の山男が散見され、畦地梅太郎の家族への愛情を感じることができます。
畦地梅太郎の作品を見ていくと気付くのが、画風の変化です。〈山男〉を制作し始める前などは写実的で細かな描写の作品が多くみられますが、〈山男〉制作後の画風は抽象的なものへと変化しています。
人気があるのは抽象的な画風の作品です。〈山男〉が描かれていない作品でも、抽象的な画風の1960年から1980年代に制作された作品は人気が高く、査定価格も高額になる傾向にあります。
畦地梅太郎はたくさんの画集も制作していますが、代表的なものは以下の作品です。
・伊豫風景(1936年)
・満州(1944年)
・山湖(1949年)
・山の太陽(1963年)
・山の歌声(1963年)
・山の呼ぶ声(1963年)
・山 北アルプス(1967年)
・愛しの山男たち(1978年)
畦地梅太郎の作品に限らず、木版画を評価する上で大切なポイントは4つありますので、ご紹介したいと思います。
ここでいう大きさとは、額を含めた商品の大きさではなく絵の部分の大きさです。当然、小さい作品よりも大きい作品の方が評価は高くなり、買取価格も高額になります。
版画は紙に刷られていますので、当然のことながら劣化が生じるもの。特に気を付けないといけないのが、日焼けと湿気によるカビ・シミ・汚れです。
版画をリビングや部屋に飾っている方も多いと思いますが、直射日光の当たるところに飾るのはNG。日焼けによって色あせが起こり、作品の価値を大きく下げることに繋がります。
飾る場合は、直接日光の当たらない場所に飾るとよいでしょう。版画は湿気にも弱いので注意が必要です。押入れの中に片付けていて、出してみるとカビやシミが発生している場合がよくあります。日本は梅雨など湿気の多い気候なので、どうしてもカビやシミは発生しやすい環境です。作品を購入した時に付属しているタトウ箱や黄袋に入れていても防げません。
保管する場合は、高温多湿・直射日光を避けることが大切です。日焼けやカビ・シミは査定の際、買取額が大きく下がる原因となってしまうので要注意。
版画には通常、作品の下側のマージン(余白の部分)部分に鉛筆でサインが書かれています。本物の作者のサインかどうか、真贋を判断する上で非常に重要なポイントです。
また、サインとは別に○○/○○○といった数字が書かれています。これはエディションNo.といって、ここに書かれている数字はその作品が作成されている枚数を把握するためのものです。AP・EP・EAといったアルファベットが書かれている場合もあります。
サインのないものは評価が低く、買取価格も下がってしまう要因に。サインは鉛筆で書かれており、作者によっては落書きのように見える場合もあります。実際に読めないサインは非常に多いのですが、価値を下げないためにも間違えて消さないようしましょう。
当然ながら人気作家や有名作家の版画は評価が高くなり、買取も高額になります。また同じ作者の作品でも、図柄・構成が人気のあるものかどうかも重要なポイント。畦地梅太郎の作品の例でいうと、同じ大きさ・同じ状態のもので〈山男の描かれている作品〉と〈風景だけの作品〉では、〈山男が描かれている作品〉の方が人気です。そのため、評価や買取額が高くなるのは〈山男が描かれている作品〉ということになります。
先日、出張買取でお客様のお宅へ伺った時のことです。遺品整理をされており、その中で目に留まったのが廊下に飾られていた畦地梅太郎の木版画。大きさは葉書サイズのもので、本人サインやエディションNo.もない小型の作品でしたが、買取をさせていただきました。
ご依頼主の方は、絶対値段が付かないと思われていたそうです。最初は査定依頼をされる予定はなく、畦地梅太郎のこともご存じではなかったとのこと。画風を見て、小学生が書いたような絵という印象を持たれていました。
小型の作品でサインもないため、高額買取とはいかなかった今回の木版画。それでも値段が付き、買取が成立したことにお客様は大変驚かれ、喜んでいただけたご様子でした。
骨董品・美術品の買取専門店『くらや松山店』では、木版画の価値をしっかりと鑑定し高価買取をさせていただきます。大型の作品で持ち運びが大変な場合は、出張買取で現地にお伺いし査定することも可能です。
作者のわからない作品や状態の悪いものなど、経験豊富な専門知識のあるプロ鑑定士がしっかりと拝見し、価値のあるものを見逃しません。是非お気軽に『くらや松山店』へご相談ください。
お客様からのご連絡、心よりお待ちしております。
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