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こんにちは。愛媛県松山市で骨董品や美術品の買取を行っている「くらや 松山店」の鑑定士です。今回は「鼈甲の眼鏡」について、買取の現場で培った知識とともに、実際に当店(イオン松山店内)で買取させていただいたエピソードをご紹介いたします。
鼈甲の眼鏡は、その美しさと独特の質感から現在でも根強い人気があります。骨董品としての価値もあり、正しい査定が求められる分野です。この記事では、鼈甲の眼鏡にまつわる知識や価値のポイント、買取の現場での実例などをお届けします。
鼈甲とは、タイマイというウミガメの甲羅を加工して作られる伝統的な素材です。その起源は古く、奈良時代から装飾品として日本でも用いられてきました。江戸時代には櫛や簪、印籠などに使われ、明治以降には眼鏡のフレームとしても広く愛用されるようになりました。
鼈甲の最大の魅力は、半透明で艶やか、飴色の独特な質感にあります。また、加工しやすく、肌にも優しいことから、かつては高級眼鏡素材として不動の地位を築いていました。
しかし現在、ワシントン条約によってタイマイの輸出入が制限されており、新しい鼈甲製品の製造は非常に限られています。そのため、今市場にある鼈甲製品の多くは古い時代に作られたものであり、骨董的価値や素材的な希少性が評価されるのです。
明治以降、西洋文化の影響で眼鏡の使用が一般化する中、鼈甲はその美しさとしなやかさから高級眼鏡素材として重宝されました。とくに昭和初期から戦後にかけては、純鼈甲製の眼鏡がステータスシンボルとして流行。
多くの熟練職人が丁寧な手作業でフレームを仕上げ、日本独自の「鼈甲眼鏡文化」が築かれていきます。中には、象牙や金細工を合わせた芸術品のような眼鏡も存在し、美術品としての評価も高まってきました。
鼈甲の眼鏡と一言に言っても、実はさまざまなタイプがあります。純粋な天然鼈甲のものもあれば、プラスチックに似せた模造品、あるいは鼈甲と樹脂を混ぜたハイブリッドタイプも存在します。
・軽くて温かみのある手触り
・柔軟性があり、折れにくい
・光を当てると奥行きのある複雑な色合い
・鼈甲独特の模様(虎斑模様など)がある
・樹脂製は光沢がやや不自然
・鼈甲に比べて硬く、重い
・熱で炙るとプラスチック臭がする
※このような見極めは専門の知識がないと難しいことも多いため、鑑定士による正確な査定が重要です。
鼈甲製品は、その色合いの違いによって印象や価値が変わってきます。鼈甲眼鏡にもさまざまな色味のものがあり、色の違いがデザインや価格に影響することもあります。ここでは、代表的な3種類の色調とその特徴をご紹介します。
鼈甲と聞いてまず思い浮かべるのがこの「飴色」のタイプです。透明感のある茶褐色に、濃淡が複雑に混じった虎斑模様が特徴で、最も多く流通している種類です。
・高級感と温かみを兼ね備えた色合い
・光の当たり具合で見え方が変化する
・模様の出方によって一点物のような風合いがある
黒甲は、鼈甲の中でも色味が黒く、重厚で落ち着いた雰囲気が特徴です。自然界では希少なため、使用できる部位が限られており、加工も難しいとされます。
・引き締まった印象で、ビジネス用眼鏡にも人気
・汚れや変色が目立ちにくい
・鼈甲愛好家やコレクターに好まれる傾向あり
白甲は、タイマイの腹側など限られた部分からのみ取れる、乳白色に近い半透明の素材です。きわめて希少で、かつては「鼈甲の最高峰」として扱われていました。
・明るく優しい印象を与える色合い
・加工には高度な技術が必要
・他の色と組み合わせた「二色甲」などにも用いられる
このように、鼈甲には色味の違いがあり、それぞれに独自の美しさと価値があります。もし判断が難しい場合は、専門の鑑定士による鑑定をおすすめします。
鼈甲製品は繊細な素材ですので、保管方法によっては劣化を早めてしまうこともあります。もしご自宅に鼈甲製品がある場合、以下の点に注意してください。
・直射日光・高温多湿を避ける
・通気性のある布に包んで収納
・長期間使用しない場合も年に数回取り出して風通しを
ある日の午後、松山市天山のイオン内にある当店に、70代女性のお客様が訪ねて来られました。ご主人の遺品整理を進めている中で、「大切に使っていた鼈甲の眼鏡があるので査定してもらえませんか」とのご相談でした。
お持ちいただいたのは、鼈甲独特の飴色が美しい立体感のある眼鏡フレームで、蝶番部分もしっかりしており、全体的に使用感はあるものの、非常に良好な状態でした。ケースもしっかりと保存されており、眼鏡拭きには職人銘がさりげなく記されていました。
その場でルーペを用いて状態を確認し、本鼈甲であることを説明。お客様は「もう誰も使う人がいないから、価値の分かるところに託したい」とお話しされていました。「こんなに高く評価していただけるとは思いませんでした」と驚きと共にご納得の表情でお帰りになりました。
眼鏡は「ただの古い道具」と思われがちですが、鼈甲製のものには素材的価値・工芸的価値・そして想いの価値が宿っています。
当店では、そうした価値を正しく評価し、1点1点丁寧に鑑定・査定させていただきます。査定料や出張費は無料ですので、お気軽にご相談ください。
鼈甲の眼鏡は、手間をかけて作られた工芸品であり、持ち主の人生の一部でもあります。その価値は単なる素材やブランドだけでは測れません。大切な品だからこそ、専門の目を持つ鑑定士による正確な査定が求められます。
愛媛県松山市で鼈甲の眼鏡をお持ちの方、ご自宅の整理やご家族の遺品整理で見つかった方は、ぜひ一度「くらや 松山店」までお越しください。